TERUです。
今週7月4日(水)は、アメリカの独立記念日です。
独立記念日、建国記念の日に関して、以前、こんな記事を書きました。
2/11は建国記念の日。日本建国の歴史とは?世界の建国記念日との違い
僕は、この記事を通じて、僕は「日本はすごいんだ」と言いたいわけではありません。
自国の歴史を知ることの大事さ。
そして、自分と異なる歴史観を持つ人とは、とことん話すべきだと思っています。
僕はアメリカで
・自国の歴史
・自国の国歌
・自国の国旗
という話題について、色々な国籍の人達と議論を交わしたことがあります。
その議論の内容が合っている、間違っているは別にして、お互いが、自国を愛する気持ちがあることを確信しました。
この「自国を愛する気持ち」を日本語では「愛国心」と言います。
そして、他の言葉で言い換えるとしたら「ナショナリズム」になります。
ナショナリズム
日本で、この言葉を聞いたら
・国粋主義
・軍国主義
・タカ派
というイメージが100%付きまといますよね。
僕の意見を色々と書く前に、前提を共有したいと思います。
その前提とは、「ナショナリズム」という言葉の定義をする事です。
【目次】
1. ナショナリズムとは?(言葉の定義)
2. ナショナリズムという概念の歴史と、ナショナリズムの発展
3. 日本におけるナショナリズムの歴史
4. 日本とアメリカの、ナショナリズムを育む教育の違い
5. 日本においてナショナリズムは、何故ネガティブイメージなのか?
6. 日本は国家レベルで「国を愛する」ことがタブーな例
7. まとめ
1. ナショナリズムとは?(言葉の定義)
英語辞典の代名詞として名高い、ウェブスター辞典で調べてみると
Nationalism:loyalty and devotion to a nation
ナショナリズム:国家への忠誠心や献身
※愛国心も調べてみました。
Patriotism:love for or devotion to one’s country
愛国心:国家への愛や献身
英語の百科事典としては最古のものであるブリタニカ百科事典では、どう書いてあるのでしょうか?
Nationalism:ideology based on the premise that the individual’s loyalty and devotion to the nation-state surpass other individual or group interests.
ナショナリズム:個人や集団の利害関係を超えた、個人による国家への忠誠心と献身を前提とするイデオロギー
※愛国心も調べてみました。
Patriotism:feeling of attachment and commitment to a country, nation, or political community.
愛国心:自己の属する共同体(国家や文化共同体、政治的共同体)への 愛着感や献身
※Wikipediaは編集可能という事で、僕は参考程度に見ているので、ここでは参照しません。
多くの日本人からしたら
愛国心の意味は、腑が落ちるとしても・・・
ナショナリズム:国家への忠誠心や献身
というのは、違和感があるのではないでしょうか?
僕も、日本に住んでいたときには、こういうイメージが無かったです。
前提が出来たところで、このブログ内では
ナショナリズム:純粋な国家への忠誠心や献身
という事で話を進めていきます。
決して、その為に国に命を投げ出せ。などという意味ではありません。
この言葉の定義=軍国主義だと言われたら、話がかみ合わないので読み進めなくて大丈夫です(笑)
2. ナショナリズムという概念の歴史と、ナショナリズムの発展
まず、「ナショナリズム」という概念はいつ生まれたか?という歴史を見てみましょう
それは、フランス革命で生まれました。
(フランス革命の細かい内容は、調べていただくとして・・・)
フランス革命により、王政が打倒されて、国民が主権を握りました。
そして、国民国家の象徴として、フランス国旗(青、白、赤のトリコロール)が作られました。
フランス革命前のフランス(ブルボン王朝)では、貴族や平民などの身分制が存在した社会でした。
フランス革命後のフランスでは、貴族も平民も関係ないフランス国民(nation=ナシオン)となりました。
この時に、フランスで生まれたナショナリズムとは?
王政に対抗するフランス国民(nation=ナシオン)
です。
※ナシオンは、フランス語を無理やりカタカナにしました。
その当時のヨーロッパでは、このように「国民意識」というものは存在しませんでした。
その意識の差もあり、続くナポレオン戦争の時には、ヨーロッパ最初の国民国家であるフランスは、ヨーロッパの王朝各国を次々に制圧していきました。
王朝国家の兵隊が「国のために戦おう」という気概が薄かったという一面もあったと言われています。
一方のフランス兵は「たとえこの身が滅ぶとて 祖国フランスが守れれば」という意識がありました。
ナポレオン失脚後には、ヨーロッパ全土に国民の権利が保障されていく国民国家が誕生していく事になります
その1つが、ドイツです。
当時のドイツは、小さな民族の集まりでした。
そんなドイツがフランス軍に占領されたショックの中から、
「民族がバラバラではダメだ。1つにまとまらなくては!」
という意識が生まれました。
この時に、ドイツで生まれたナショナリズムとは?
フランス(ナポレオン)に対するドイツの国民(ナツィオン)
です。
※ナツィオンは、ドイツ語を無理やりカタカナにしました。
つまり、ナショナリズムという概念は、大きく分けると
「絶対王政に対抗するナショナリズム」
「外からの攻撃から身を守るためのナショナリズム」
という風に、分ける事が出来ると思います。
※詳細な歴史の流れをかなり省いていますので、細かく調べたい人は、調べてみて下さい
3. 日本におけるナショナリズムの歴史
ナポレオンの登場は、当時のヨーロッパ、そしてアメリカにも大きな影響を与えました。
そして1853年。ペリーが日本に来航。
当時の西アジア、東南アジアの様子を知る幕末の人達は、日本が植民地化されることを恐れました。
あとは、皆さんも知っている幕末の歴史になっていきます。
(イギリス、フランスの暗躍などの話は、ここではしません)
そして、今までの士農工商という身分制度を撤廃。
日本国内に何百とあった諸藩も統合しました。
日本国民を日本人として統一することを行っていきます。
ここで、初めて日本のナショナリズムが誕生していきます。
そして、日本がアジア初の国民国家として誕生しました。
インド、東南アジア、中国などがヨーロッパ諸国からの植民地支配を受けていた中で、日本が植民地されなかったのは
・地政学的な地理的条件から、他国からの侵略の脅威が無い歴史を持っていた
・ナショナリズムの覚醒
という理由が大きいと思います。
ここで言う、日本のナショナリズムの覚醒とは
「外からの攻撃(植民地支配)から身(国)を守るためのナショナリズム」
ということを意味しています。
当時の日本には、ナショナリズムがあったために、日本の兵隊さんは、国を、愛する家族を、欧米諸国からの植民地支配から守るために死ぬ気で戦ったのです。
それは、フランスの兵隊が「たとえこの身が滅ぶとて 祖国フランスが守れれば」という気概があったのと同じだと思います。
しかし、残念な事に、明治以降の日本(大日本帝国)は、間違った方向に走ってしまいました。
それは、色々な原因(レーニンの影響、マスコミの扇動など)がありますが、“行き過ぎたナショナリズム”が一番の原因だったと思っています。
この”行き過ぎたナショナリズム”が、特攻隊などで未来ある若者の命を無駄に奪う結果に繋がってしまいました。。。
そこは、歴史から反省すべきです。
僕は戦争を美化しているのでもなく、戦争を賛美しているのではありません。
戦争なんてあるべきではないし、なくなるべきです。
でも、周りの国々が、核弾頭を持ち、自国の領地を勝手に占領しているという残念な状況がある場合、
・自衛の為の戦力(=自分から仕掛けるのではなく、威嚇としての武力)
・ナショナリズム
がないと、自分の命、自分の大切な人の命を守る事は出来ないという事も、事実ではないでしょうか。
4. 日本とアメリカの、ナショナリズムを育む教育の違い
~日本の場合~
日本に住んでいると、小さいときから「周りが日本人」という環境から、自分が日本人であるというアイデンティティーは持っています。
その一方で・・・
「日本は、国民意識・ナショナリズムが生まれにくい教育システム」
になっています。
今の教育がそうなのか?は100%の確信を持って言えません。
でも、少なくとも僕が小・中・高と受けてきた教育はそうでした。
~アメリカの場合~
アメリカでは、小さいときから「周りには様々な国籍の人が住んでいる」という環境です。
そういう環境だからこそ、自分は何者だ?というアイデンティティーが芽生えずらいようです。
そこで、小さいときから学校では、「Pledge of Allegiance(忠誠の誓い)」を宣誓します。
また、スポーツ会場で国歌を歌うときは、皆が立ち上がり、帽子を取ります。
「アメリカは、国民意識・ナショナリズムが生まれやすい教育システム」
が根付いています。
※アメリカに住む全員がそうではありません。
(例えば、エ〇バの証人の方などは、国旗への忠誠を誓っていません)
~ここで一言~
国歌斉唱や、国旗を掲げる事は、国民国家にとってナショナリズムを育てるという面では大事であるとは思います。
思いますが、それらを全国民に強制は出来ません。
聞かない自由、歌わない自由、旗を掲げたくない自由があるからです。
その一方で、
聞く自由、歌う自由、旗を掲げる自由もあります
だからこそ、
国歌を歌おうとしている人、国旗を掲げようとする人に対して、妨害を行うのはダメですよね。
自分の意思を相手に強制するのは、身勝手すぎです。
5. 日本においてナショナリズムは、何故ネガティブイメージなのか?
前提として挙げたように、ナショナリズムという言葉の定義を見ると、言葉自体は文句なしにポジティブです。
その一方で、日本国内での「ナショナリズム」という言葉のイメージは、ネガティブです。
ナショナリズムの概念の歴史から見ても、
「本来のナショナリズムは、外からの攻撃から身を守るために発動されるもの」
であるはずです。
もちろん、その概念は
・国民の感情を駆り立てる歳に、意識的に政治的に利用される
・国内のトラブルから国民意識をそらせる為に利用される
ことがあるのは、事実です。
アメリカでは、小さい頃からPledge of Allegiance(忠誠の誓い)を暗唱します。
また、他の多くの国では「国を愛する」というような言葉。
公的にも私的にも、よく耳にするし、好ましい言葉として受け取られている気がします。
現代の多くの国民主権国家において、ナショナリズムは国家責任として行使・保持されている権利です。
一方、日本では戦後教育の賜物なのでしょう(皮肉ですよw)
国家レベルで「国を愛する」ということがタブーであるように思います。
つまり・・・
敗戦後の日本は、国家としてナショナリズムを否定する国であったという事です。
6. 日本は国家レベルで「国を愛する」ことがタブーな例
例えば、2006年の「教育基本法」の審議の討論。
教育の目的の「愛国心」という言葉が、与党議員から提出されましたが、与野党の両議員からの反対を受けました。
反対派は
「法律での、この言葉の使用は、戦前の価値観の個人への押し付けを復活させる危険がある」
と主張しました。
その後、妥協案として、
「国を愛する心」
を出しましたが、それでも強すぎるとして反対されました。
結果、
「郷土と国を愛する態度」
という、分かるような分からないような“曖昧”な表現に落ち着きました。
7. まとめ
僕は今アメリカに10年住んでいて、色々な国の人と接しています。
それまでの僕は、多くの日本人が持つような「ナショナリズム」=「ネガティブなイメージ」を持っていました。
でも、色々な人達とコミュニケーションを重ねた今は違います。
「ナショナリズムを否定するという事は、国民主権国家を否定する事である」
という事を、ビジネススクールの国際ビジネスの教授から言われました。
さらに、彼女はこうも続けました。
「国民主権国家を否定するという事は、自分そして自分の大切な人の命を守れないという事だ」
この言葉が、僕の意識を変化させた事は言うまでもありません。
長くなりましたが、今週7月4日がアメリカの独立記念日という事もあり、ナショナリズムという言葉に絡めて、自分の意見を書かせて頂きました。